このページでは、医療従事者のストレスマネジメントについて、架空の実践例を挙げています。 昨今、感情労働などという言葉を聞く機会が増えました。
医療従事者においてももちろん、なんらかのストレスマネジメントを実践することは援助の質を保つ意味でも大きな意義を持つと思われます。 しかし、特殊な職業ともとれる医療従事者のストレスマネジメントをどのように実践した良いのでしょう。
ある心理士の取り組みを例に実際に触れています。これは臨床心理的地域援助とも言える活動になります。 ここでは、物語風に、ストレスマネジメントを実践していく様子を書いていきます。ストレスマネジメントの方法はそれぞれで、唯一の形があるというものではありません。幾つかの活動を知っておくことは非常に意味のあることだと思います。
- ある病院で医療従事者を対象としたストレスマネジメントの実践例
- 第6話:振り返りシート
- 第7話:ストレスマネジメントの各種集計のまとめはわかりやすく図や写真を中心に
- 第8話:現場からもっとストレスマネジメントを勉強したいという自発的な動きがある
- 第9話:収拾のつかない会議
- あとがき
ある病院で医療従事者を対象としたストレスマネジメントの実践例
副院長からこれまでにないストレスマネジメントの要請を受けた心理職Aさん。病院内をよくよく観察していくと思うところも出て来たようです。Aさん独自の方法はうまく行くのでしょうか。フィクションです。
- 第1話:副院長から全く新しい視点から職員のストレス対策を実施せよと要請がある
- 第2話:厚生労働省が労働者の心の健康を保持増進するために重視する4つのケア
- 第3話:たくさんの委員会に追われて疲弊する同僚看護師達
- 第4話:負担をかけないシンプルなストレスケアを旨とした
- 第5話:医療従事者の職場環境上の特性を考慮したリラクセーションプログラムの作成
- 第6話:振り返りシートを活用してストレスマネジメントをまとめる
- 第7話:ストレスマネジメントの各種集計のまとめはわかりやすく図や写真を中心に
- 第8話:現場からもっとストレスマネジメントを勉強したいという自発的な動きがある
- 第9話:収拾のつかない会議
第1話:副院長から全く新しい視点から職員のストレス対策を実施せよと要請がある
このページは、ある心理士の取り組み(フィクション)の1話目です。現在8話まで話が進んでいます。心理職は、様々な現場に配置されています。Aさんは、職員数1000名ほどの病院に勤務していました。ある日、副院長に呼ばれ、下記のような話がありました
副院長からストレス対策の要請を受けたAさん
。 「病院では、ストレス対策を推進している。君の専門領域だと思うので、やってみて欲しい。通常の業務や他の委員会で皆手がいっぱいな面もあり、申し訳ないが、ひとまず一人でやってみてくれないだろうか。その代わり内容は君に一任する」
1000名規模の組織のストレスマネジメント
なんとも、まるで、Aさんが暇人であるかのような言われ方をしてしまいましたが、快く承諾し、直ぐに考えをまとめはじめるのでした。
ストレス対策と言っても、実はその幅は広く、1000名規模の組織のであれば、既に対策がなされている面もあります。もし、心身の不調で休職した職員の、復職までのスケジュールをどのように組むか、復帰の判断はどのように行うか、などAさんの職場ではこれらのことは、既にしっかりとしたシステムが出来上がっていました。
それでは、副院長は何をもって、ストレス対策ということを依頼してきたのでしょう。
これまでとは全く別なアプローチ
副院長の言葉を借りれば、「君にはシステムというよりは、啓蒙や具体的なストレス対処の面で、もう少しできることがないか実践してみて欲しい。職場の環境改善も重要なことだが、それには限界もあるし、また別な人がそれはずっと考え続けている。
これまでとは全く別な視点やアプローチを、心理専門職の立場から模索してもらえないだろうか」 副院長の考えは、何か今行われている視点とは別なことにあったようでした。 さて、このような活動は臨床心理士の専門性で言うところの、臨床心理的地域援助という専門性と関係してきます。副院長がAさんに依頼したことは、的外れではなかったのですが、果たして何か副院長が納得するような結果が出せるものでしょうか。
Aさんの迷いは広がります。
第2話:厚生労働省が労働者の心の健康を保持増進するために重視する4つのケア
この物語は、数話に分けて書かれています。こちらは第2話です。
ストレス対策と言うと、かなり漠然としているように思えますが、厚生労働省は、関連する指針を既に平成18年には発表しています。Aさんも専門職として知識があったため、その指針をもう一度読み返してみました。
厚生労働省の指針が示す4つのケア
労働者の心の健康を保持増進のための指針(外部リンクです)という内容です。この指針では、漠然としている内容が、4つのケアという具体化された指針として示されています。これはストレスマネジメントを進めるうえでも参考になりそうです。
4つのケアとは
その4つのケアとは下記の通りです。
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業場内産業スタッフ等によるケア
- 事業場外資源によるケア
厚生労働省は、この4つのケアを骨子に考えています。 この指針は、個人レベルでできることから、職場環境の改善、職場内外の資源の活用までを視野に入れており、枠組みを考えるうえで参考になりそうでした。 Aさんは、早速、病院の取り組みがどのようになっているかを、4つのケアの観点から検討してみました。
セルフケア
Aさんの病院では、毎年、職員研修の一コマに、メンタルヘルス関連の講義を取り入れていました。その中で、ストレスやその対処に関する知識を得ることができるようにプログラムされていたのです。全職員が対象で、出席できなかった職員には、資料の配布も行っていました。
ラインによるケア
管理職向けの研修は、全職員対象の研修とは別にも設けられていました。気になる部下の様子が伺えたら、どのようにしていこうか、などというテーマの研修が行われていたのです。また、職場内のストレス調査も定期的に行われ、その結果の概要もまとめられていました。
事業場内産業スタッフ等によるケア
事業場内産業スタッフには、医療機関という関係上、多くの職種が揃っていました。医師をはじめ、看護師、保健師、臨床心理士などです。 職員向けの、相談室が解放されていました。また、衛生委員会が設置され、どのようにメンタルヘルス対策を推進するか、計画も立てられています。
事業場外資源によるケア
総務部が開拓したカウンセリングルームがあり、職場外でもカウンセリングを受けられる体制が整っていました。その他にも、メンタルヘルス関連する外部の情報を相当に蓄積していました。 Aさんは、これらを調べ終わると、自分の仕事は一体どこにあるのだろう?と益々迷いを深めてしまいました。
自分も、衛生委員会に混ぜてもらった方が良いのではないか?しかし、副院長は一人でやるように言っていたし・・・。 この他に何かできそうなことがあるのだろうか。
第3話:たくさんの委員会に追われて疲弊する同僚看護師達
第3話です。
もう話が進んでいるのに、新たに何を付け加えるというのでしょうか。不足していることがあるにして、委員会で次第に検討が始まるでしょう。
副院長が言う、全く別な視点とはなんのことだろう。病院内では、同僚が忙しそうに、カルテやベッドを運んでいる姿があります。こんなに忙しそうにしているくらいだから、きっとストレスも大きいことは確かなのでしょう。
委員会に追われて同僚看護師達は疲弊していた
そんなときに、聞こえてきたのは、「会議に送れちゃう・・・」とせかせかと通り過ぎていく同期の姿でした。現場に入りながら、時間が来ると会議に出席するのだそうです。その同僚は、いくつも委員会に所属して、会議も多いと以前に言っていたのを思いだしました。
会議のストレスは明白だった
会議がストレスになっていることは明白でした。1時間でも2時間でも続くのだそうです。それが幾つもあるらしく。
しかし、会議をなくしてしまうわけにもいかないだろうしなぁ。とAさんは益々悩んでいくのでした。 Aさんも経験がありますが、会議では若手は特に、緊張を伴い、一つの会議に出るだけでも多くのエネルギーを消耗します。
何か、愚痴でもいえる場所があればいいのだろうか・・・皆飲み込んでいるようなことがあると思うだけど。しかし、それも難しい話だな・・・。 上司や部下、同僚という関係が複雑にある中で、一辺倒なやり方で実現可能なものだろうか。
体調を崩した同期
数週間、Aさんは迷いが続いており、たくさんの資料にあれこれ目を通しました。そのとき、同期が体調を崩して、しばらく休むという話が伝わってきたのです。ある管理職から聞いた話では、こうした体調不良で休む職員が増えてきているのだそうです。
4つのケアの推進は進んでいても、体調を崩して困っている人はやはりいるようです。 Aさんとして、このような人への支援が何かできないものかと考えていました。
Aさん自身の専門性を振り返ると、リラクセーションなどの手技を身に着けており、何か役に立てられないものでしょうか。 例えば、漸進的筋弛緩法という、セルフケアにも使える方法があります。しかし、それならば職員研修でもう紹介されていたのだそうです。
あとがき
病院も会議、会議、会議ばかりです。もちろん必要な事ではあるのですが、それにしても多すぎます。いつの間にか事務職になっていたかのような人もいることでしょう。
「病院機能評価」が一番の背景要員ではないでしょうか。機能評価の基準を満たすため院内を奔走し燃え尽きた援助職者は数知れないのではないかと想像しています。(関連:対人援助職の燃え尽き症候群)
- 該当サイト:病院機能評価とは
第4話:シンプルなプランがベストと考えた
第4話です。
Aさんは迷いながらも、職場内をよく観察した結果、幾つかの視点をもちました。
- シンプルなプラン
- 職場内に生じる役割、立場という要因
- 自発的な参加
この3点をまずは、Aさんの企画の柱にしようと考えるに至ったのです。
病院内は、多忙で、多くの会議や研修で溢れかえっています。そのため、新たに新しい研修や調査を組み込むことは、職員にとって新たな負担が増えることに直結する可能性の方が大きいと考え、大げさな研修や、調査は行わないことにしました。
そもそも、衛生委員会が実施したデータがあるので、それを参照すれば調査を行う必然性もなかったのです。また、これまで行われてきている取り組みに敬意を払う態度を忘れないようにしました。
職場内で生じる役割、立場という要因
いろいろな関係性の中で、遠慮したり、逆に責任を負いすぎたりする職員が出てしまう場面もありました。これが組織の性質と言えばそれまでですが、普段の関係性を持ちこまない形での企画を実行することに意味を見出したのです。例えばそれは、安全に参加できる勉強会の企画などになります。
自発的な参加
いわば義務的なメンタルヘルスに関する研修は、十分に行われています。さらに、出席を義務付けるような勉強会のスタイルは避けたいと思い、参加してもしなくても良い勉強会というコンセプトを挙げました。自発的に参加してみたいという時に、大きな成果が上がるのではないかと考えたのです。
企画案
以上の3点をもとに、Aさんはリラクセーションを主軸に据えた勉強会の開催を考えました。急ぎで、企画書をまとめ、副院長に話を通しました。シンプルを旨としているので、全ての準備から運営、片付けまでをAさん一人で完結できる案を考えました。 副院長は、「やってみて下さい」と言ったのでした。
後書き
ストレスケアに限らず、組織内で新しい取り組みがなされると、「また負担が増える・・・」という声ばかりが聞かれます。そして、上司が怒って、いやいや皆で取り組む姿があります。ストレスケアにおいても同様のことが起き得ますので、そうはならない、負担を生まない配慮が求められます。
第5話:医療従事者の職場環境上の特性を考慮したリラクセーションプログラム
第5話です。
Aさんは、ポイントを整理して、ある勉強会を企画することを考えました。 通称「リラックスの会」として、参加した職員にリラックス感が残る勉強会を考えたのでした。 企画にあたっては、これまで考えたことから、幾つもの工夫を凝らしました。 医療従事者向けの会を開催する上での工夫として・・・
- 病院には、多くの部署があるので、部署単位、またはそれ以下の人数でも開催
- 義務ではなく、あくまで自由参加であり、申込み性とする
- 時間や場所は、極力申し込んだ人の希望に合うものとすること
- 会の内容は、15分、30分、60分、90などの複数バージョンを準備
このように、とにかく、職員が新しい負担が増えるというプレッシャーを受けないような配慮に全力を傾けたのです。医療従事者を取り囲む職場環境を全く無視した形の計画では、ストレス対策が逆にストレスをもたらしてしまう可能性に留意したのです。
業務の合間に、1時間の時間を作ることは困難でも、30分単位であれば、参加したいという人もいるかもしれません。全職員一斉にという形では実現できなかったことも、この形式であれば、かなりの柔軟性を持って参加してもらえるのではないかと考えました。
Aさんは、早速、各部署に貼り紙をお願いして、興味のありそうな人へ情報が届くようにしました。連絡方法には院内のメールや、直接予約、電話があり、職員の都合で連絡でしてもらうようにしたのです。
リラクセーションプログラムの内容
さて、会のプログラムですが、何パターンもの実施方法を準備しました。主に漸進的筋弛緩法を用いたリラクセーションになりますが、講義を入れる場合と短くする場合など、筋弛緩法の実施時間、モデル提示の時間、筋弛緩法以外のリラクセーション法の提示など、Aさんの中では数十パターンのやり方を想定していました。
広報では、主に椅子に座って行う場合、床に横になって行う場合、立ったままの姿勢で行う場合の3パターンとしました。内容によって、時間を調整できるため、30分からの開催が可能なのです。
横になって行うプログラム
横になってのプログラムでは、通常やや広いスペースを必要とします。その場合、広い会議室が適切なのですが、毎回会議室を押さえることは難しく、会場の確保だけでも多くの労力を必要としてしまいます。そこで、柔らかめの床であれば、即席でシーツやシート類を用いて、簡易の会場を作ることにしました。
また、どうしても硬い床しか確保できない場合には、移動式のマットを持ち込むことで、場所を選ばずに勉強会を開催することが可能となりました。横になってのプログラムは、手や足、顔を順番に弛めて行くオーソドックスなプログラムで、リラックス感も得られやすいものとなりました。
椅子で行う内容
会議室タイプまた、何かの会議の一コマで、リラクセーションを紹介して欲しいという要望が挙がることもあり、その場合は、椅子、または立ったままできるリラクセーションのプログラムを用いることにしました。会議の中に勉強会が組み込まれることはよくあることで、その場合、わざわざ会場を作り直す時間はありません。すぐに内容に入れるように、椅子、立ったままの姿勢を中心にしたプログラムを準備しました。この場合、所要時間は15分が限度です。椅子の場合でも、基本的にリラクセーションを行う部位は同じです。
- 混合
時間が十分にあり、いろいろな方法を紹介することが可能な場合には、椅子や立位、横になった形などの方法を混合でプログラム化しました。また、講義方法にも工夫を加え、ワークショップ形式にする場合と、単にこ講義を行う場合とで分けました。
プロジェクタで資料を映し出す方式にも対応し、また、A3用紙を両面印刷した資料でも対応できるようにしました。もしもの場合は、紙の資料を用いずに行えるようにも準備したのです。ここまで準備をするとある程度のアドリブも可能になっていきました。
ポイント
この企画のポイントは、会を大げさにせず、こじんまりと実施できる点に特徴があります。もちろん大規模に行うことも可能ですが、多くの場合数名単位の開催が多いものです。その場合、大人数向けを前提にしてしまうと、開催自体に労力を費やしてしまい、また得ることも少ないという結果すらあり得ると考えたのでした。
Aさん自身は何度もこのプログラムを準備したり、実施する必要がありますが、その点についてもこじんまりした計画のためそれほどの負担にはならないのです。プログラムは使いまわしで何度も使用できますし、会場準備にも10分程度の時間しかかからないのです。
★リラクセーションとは 緊張を弛める方法の一つには、リラクセーション法の活用が挙げられます。 我々は日常生活の中でも、自然とリラクセーションを取り入れているものですが、臨床心理学の方面からも、専門的な方法が確立されています。
エドモンド・ジェイコブソンによって考案された方法です。長い歴史があり、現在でも心療内科等の領域で活用されています。非常に導入しやすい方法でもあり、教育現場や産業関係でもよく用いられています。
- 自律訓練法
ドイツのシュルツによって考案された方法です。漸進的筋弛緩法と同様に、心療内科などで用いられています。体を大きく動かすような方法ではなく、手や足の重温感などの練習からはじめる方法です。
- 臨床動作法
日本で成瀬悟策によって、考案された方法です。元々は動作改善の方法として始まりましたが、その領域は拡大し続けています。スポーツ動作法という分野も登場しています。 これらは単にリラクセーションということには留まりませんが、リラクセーションにも大いに活用できる方法です。
第6話:振り返りシート
こちらは第6話です。
概ね、Aさんの実施したプログラムは、好評だったようです。想像した通り、それぞれの部署の都合を尊重できる方式であったことが受けたようです。この方式なら、またやってみたいとの声が挙がったほどだったそうです。
Aさん自身が大変だったのではなかと思われがちですが、Aさんとしてもそれほど無茶なスケジュールの変更や組み方をする必要はありませんでした。 2時間ほどの勉強会になるとどうしても、都合をつけることが難しくなってきますが、15分単位などの場合には、回数は多くとも、比較的やりやすかったのです。
どうしても都合があわない場合には、また今度というくらいにしていました。結果的に、その方が実りがあったようです。
さて、この勉強会ですが、可能な限りで、勉強会の振り返りを実施し、その内容を記録してきました。副院長への報告もありまあすが、参加者がどのよう体験をしていたかという点をまとめることは重要であると感じていたのです。 非常に簡単なシートではありましたが、結果をまとめて、参加者にフィードバックまでをワンセットにしたのです。内容は下記の通りです。
シートの内容
本日はお忙しいところ、よくご参加下さいました。本日の内容を振り返る、下記の項目への回答をお願いしております。勉強会の終わりに回収致します。集計の結果は、個人が特定されない形にまとめ、後日フィードバック致します。
1.この一月の間、ストレスをどのくらい感じていました?下記の十段階の中で、最もあてはまる場所を〇で囲んでください。
あまり感じなかった 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 非常に強く感じた
2.ストレスが続くと、体はどのようになりますか?
・肩が凝る ・頭が痛くなる ・皮膚が荒れる ・血圧が上がる・その他( )
3.肩や首、肩甲骨、足などの中で、緊張していると感じる場所がありますか?・
ある→(部位をご記入ください )・ない ・わからない
4.本日の勉強会を終えて、いまの体の感じはいかがですか?
5.現在のリラックス感はいかがですか?以下の3つの中から一つご回答ください。
1.大変リラックスしている 2.リラックスしている 3.変わりない
振り返りシートは以上です。
結果の集計と、フィードバック方法
上記のようなシートを数量的にまとめ、それを別紙にまとめ、後日配布するという方法を取りました。しかし、細かい文字ばかりのまとめ方では、読むのも一苦労かと思い、そこでもまた一つの工夫が必要であろうことを考えたのでした。 Aさんは、どのような形式でまとめたのでしょう。
第7話:ストレスマネジメントの各種集計のまとめはわかりやすく図や写真を中心に
この物語風記事は数話に分けて書かれています。 今回は第7話です。振り返りシートの結果をまとめると、いろいろなデータが集まってきます。もともと複雑なシートではありませんでしたが、どのように結果をまとめるかによってフィードバックの印象は異なります。
集計のまとめは図や写真を中心にわかりやすさを重視した
今回は、シンプルに、図やグラフをメインにしたまとめ方をしようと決めました。細々とした文字を並べても読んでもらえる確率も下がり、それでは何のためにまとめを行ったのかわかりません。 写真を見て、当日に行ったことを想起してもらえるだけでも意味があるだろうと考えたのでした。それほどに医療現場は忙しく、また、多くの資料で埋もれているのでした。
まとめ方について
非常にあっさりとした文面でした。もう少し、表現や記載内容は推敲する必要があるでしょう。しかし、Aさんは概ねこのようなまとめ書きを配布することにしたのでした。反応は上々だったようです。副院長に報告する際にも、このフォーマットを一部使用することにしました。
また、この勉強会は何度も行っているため、その都度集計をまとめると、まとめ書きは結構なボリュームになっていきました。 毎回、所要時間や実施内容が異なるので、表現される感想や結果も微妙に異なる点は興味深い物でもありました。より意味のある方式での開催方法への示唆を与えてくれる資料にもなったのです。
第8話:現場からもっとストレスマネジメントを勉強したいという自発的な動きがある
この物語風記事は数話に分けて書かれています。 今回は第8話です。 Aさんの職場内におけるストレスマネジメントの取り組みは、半年を越えて行きました。副院長も、何やら興味深く見守ってくれているようでした。
現場職員からもっと勉強したいとの声があがる
この半年間で、Aさんの企画した勉強会に参加した人数は、150名ほどとなりました。全職員が1000名ほどの職場ですから、草の根活動で1/10以上の職員に、リラクセーションを体験してもらったことになります。 Aさんとしては、このままの調子で、継続していこうと考えていたのです。
あるお昼休みの事でした。 そんなAさんのもとへ、二人の職員が尋ねて来たのでした・・・何の話でしょう? もうちょっと本格的にやって欲しいのですが・・・ 二人の職員は、以前にAさんの勉強会に参加した方たちでした。
彼らが言うには、とてもいい経験になったので、もっと本格的な機会が欲しいとのことだったのです。 Aさんは、喜び感銘を受けました。しかし、もっと本格的に・・・とは、どのような形を想像したらよいのでしょう。 この話はひとまず保留とし、後日必ず連絡することを約束しました。 これをきっかけに、新たな形を模索することとなったAさんでした。
新たなステージへ
自発的これまでの活動は、とにかく職員に新たな負担がかからないようにと、シンプルなものを心がけてきました。 ですが、より深いリラックス感など探求するのであれば、時間を長くしたり、様々なリラックス法を色々と体験できる形も考えられます。 これまでのコンセプトは大事にしつつも、別枠で、定例開催方式もありかな・・・などと考え出したのでした。
自発性
何よりAさんが注目したことは、この申し出が副院長からでもなく、誰から促されたわけでもなく、勉強会に参加した当事者からのものであったことです。 そこには強い自発性を感じていました。 強制された研修は実りに繋がらないことがあると考えていましたから、逆に自発的な提案は意味を感じるわけです。
つまり発起人主体の会として、Aさん自身は、講師と言う立場で参加することにしたのです。 大げさに言うと、職場内に、ストレスマネジメント研究会が発足することになったのです。 どのような名称で活動するかなど、これは、もう少しふさわしい名前を考えなければなりません。こうしたところから、メンバーで決めてこじんまりとスタートすることにしたのです。
このときAさんには、グループで継続していくことに一抹の不安がありました。 その点が、グループ開催成功のカギとなると直感的に感じていたのでした。
第9話:収拾のつかない会議
この物語風記事は数話に分けて書かれています。 今回は第9話です。Aさんには研究会を立ち上げる上で、様々な不安が去来しました。その一つが会議です。
会議に収拾がつかない
研究会にはいろいろな人が参加するかもしれません。
すると、何かを決めるには会議も必要になるものです。
ですが、その会議がうまく進むものでしょうか。
Aさんの経験上、会議時間は何時間にもわたることがあります。2時間の会議でもそれは大変な事です。
場合によっては深夜まで及んだ上に、早朝に再開する場合さえあります。
緊急事態であればそういうこともあるでしょう。しかしながら、そうでない場合であっても長引いてしまう事があるのです。
これには様々な要因が考えられます。
業務を圧迫
連日の会議は、本来の業務を圧迫します。
会議で遅くまで残った結果、スタッフが遅刻でもすることになったら散々な話しです。
それでは、ストレスマネジメントとは程遠い話なのです。
そもそも、連日の委員会に疲れてていた同僚たちがいたはずです。その再現になってしまってはいけません。
喧嘩が起きる
このような状態では、会員同士の葛藤も高まり、喧嘩になるかもしれません。
これには傷つく人もいるでしょうし、離れていく方もあるでしょう。
離れられればまだ良いのかもしれません、同じ緊張状態を共に味わい続ける仲間となる可能性があります。
自発的にやってきた人などは、真剣ですから我慢比べのごとく誰かが倒れるまで続くかもしれません。
もっと言えば、倒れてさえなお続くかもしれないのです。
これから、良さそうな事をはじめようとしているのに、こんな不安ばかりでもったいないようにも思います。
リスクばかり考える人とか、腰が重いとか、色々言われてしまいそうです。
しかしながら、これを考えずにして先に進んでしまうと非常に危険です。とりわけ、「ストレス」をテーマにするような会においては無視してはいけないと感じていました。
ファシリテーターの重要性
このような時、心理学を学んできたAさんは、ファシリテーターの重要性を思い起こしました。
ファシリテーターの役割は、その時間の安全を守ることにあると一つには言えると思います。
そう、研究会は安全な会にしたいという思いがあったのです。
実を言えば、会議の他にもAさんには様々な不安があったのです。例えば、技術的なことです。本格的な会となったら、Aさん求められる水準も高くなるのではないか・・・そんなプレッシャーも覚えていたのでした。
あとがき
せっかく立ち上げた研究会も、お互い傷つけって罵り合って空中分解してしまっては残念な事です。ここにはある種、専門的と言って良いであろう、研究会運営の方法が必要となります。
それは、心理的安全性が鍵になります。
- 関連ページ:心理的安全性のある勉強会
その他、結びに
様々なシンポジウムなども開催されています。これらも参考になると思います。
参考サイト:長崎大学 病院の働き方改革シンポジウム2021(株式会社ワークライフバランスより)
ストレスマネジメントがテーマではありませんが、病院の働き方についてのシンポジウムです。